業界・行政ニュース

【国交省税制改正要望】新築マンションの投機的取引を抑制へ|短期売買・価格高騰への対応を解説

国土交通省は2026年8月28日、令和9年度(2027年度)の税制改正要望を公表し、「新築マンションの価格高騰への対応に係る所要の措置」を主要項目に盛り込みました。都心の大規模マンションを中心に増加傾向がみられる短期売買について、実需に基づかない投機的取引を抑制する方策を検討し、税制上の措置を含めて必要な対応を講じる方針です。

ただし、現時点で新しい税率や対象物件、施行時期が決定したわけではありません。本記事では、公表資料で確認できる事実と今後の検討事項を分け、工務店・リフォーム会社・不動産関連事業者が押さえておきたいポイントを解説します。

この記事の要点

  • 国交省が2027年度税制改正要望に新築マンション価格高騰への対応を明記
  • 対象となる課題は、都心の大規模マンションを中心とする短期売買と投機的取引
  • 税率、保有期間、対象地域、施行日はまだ決定していない
  • 住宅事業者は「決定事項」と「検討中の内容」を分けて顧客へ説明する必要がある

国交省が税制改正要望に盛り込んだ内容

国土交通省の令和9年度税制改正要望では、新築マンション価格の高騰に対応するため、「実需に基づかない投機的取引を抑制するための方策について、必要な検討を行い、所要の措置を講じる」とされています。

ここで重要なのは、今回の発表が具体的な増税や転売禁止を決定したものではなく、税制改正に向けた政府内の要望段階であることです。今後、税制調査会などで制度の必要性、対象、実務への影響が議論されます。

背景にある新築マンション価格の高騰と短期売買

国交省資料は、首都圏や東京都区部で新築マンションの平均価格が上昇していることに加え、都心部ほど短期売買の割合が高い傾向を示しています。資料上の「短期売買」は、保存登記から1年以内に移転登記が行われた取引です。

地域 2023年 2024年1~6月
東京圏 6.3% 3.7%
東京都 8.5% 5.2%
東京23区 9.3% 5.7%
都心6区 12.2% 7.1%

短期売買のすべてが投機目的とは限りません。転勤、相続、資金事情など合理的な理由による売却もあるため、制度設計では実需の取引や健全な中古住宅流通への影響を慎重に見極める必要があります。

現在の不動産売却と「5年」の基準

現行制度では、土地や建物を売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、5年を超える場合は長期譲渡所得として区分されます。短期と長期では所得税・住民税の計算が異なります。

一方、今回の国交省資料で分析されている短期売買は「保存登記から1年以内」です。税制上の5年以下という区分と、マンション取引実態調査の1年以内という定義は同じではありません。今後の制度が既存の5年基準を変更するのか、1年以内など特に短い転売へ別の措置を設けるのかは、公表時点では未定です。

すでに不動産業界で始まっている対策

国交省資料では、不動産協会による対策として、登録・購入戸数の制限、登録名義での契約・引渡し・登記の徹底、売買契約締結から引渡しまでの売却活動の禁止などが紹介されています。

これらは税制とは別に、販売段階で過度な投機を抑える取り組みです。今後は民間の対策効果と取引実態を確認しながら、税制を含む追加措置が検討される見込みです。

住宅・建築事業者への影響

1. 顧客説明では「決定済み」と「検討中」を分ける

現段階で「マンション転売税が導入される」「短期売買が禁止される」と断定することはできません。相談を受けた際は、税制改正要望に盛り込まれた段階であり、具体的な制度は今後の議論で決まると説明することが重要です。

2. 新築販売だけでなく中古流通・リフォームにも注目する

投機抑制策が強化されれば、短期転売を前提とした需要が落ち着く一方、実需層が購入しやすい市場づくりや、既存住宅を長く使うための改修提案が一層重視される可能性があります。窓断熱、設備更新、耐震、防災など、取得後の居住価値を高める提案が重要になります。

住宅政策全体の中長期的な方向性については、国交省が検討する建築分野の中長期ビジョンと住宅ストック政策もあわせてご覧ください。

3. 契約・登記・顧客意向の記録を整理する

取引実態の把握が進むほど、購入目的、契約名義、引渡し、登記などの整合性が重要になります。不動産関連事業者は、本人確認と契約管理に加え、実需顧客へ誤解のない説明を行った記録を残しておくことが望まれます。

今後確認すべきポイント

  • 対象が新築マンションに限定されるか
  • 短期売買を判定する保有期間が何年になるか
  • 個人と法人、居住目的と投資目的をどう区分するか
  • 対象地域や物件規模に条件が設けられるか
  • 所得税・住民税など既存の譲渡所得課税とどう調整するか
  • 健全な中古住宅流通や住み替えに配慮した例外が設けられるか

SYAAからのポイント

今回の要望は、単なるマンション投資の話ではなく、住宅を「住むために取得する人」が適正な価格で選びやすい市場をどう整えるかという住宅政策上の課題です。制度が具体化すれば、新築販売、不動産仲介、買取再販、リフォーム、住宅設備の各分野に影響する可能性があります。

取引先企業の皆さまは、年末の税制改正大綱や国交省の追加資料を確認し、確定前の情報で顧客を不安にさせないことが大切です。SYAAでは、住宅・建材業界に関係する制度変更を引き続き整理してお知らせします。

出典

※本記事は2026年8月29日時点の公表資料を基にしています。具体的な税制措置は今後の議論で変更・具体化される可能性があります。不動産売却に関する個別の税務判断は、税理士などの専門家へご相談ください。

TOP