賃貸住宅で「断熱性」や「静かさ」は、どこまで入居者の物件選びに影響するのでしょうか。日本財託管理サービス、東京都、YKK AP、スマサテが賃貸オーナー624名を対象に実施した共同調査では、回答者の約9割が、内窓の設置によって入居者に選ばれやすくなる可能性を感じていることが分かりました。
本記事では、2026年8月26日に公表された調査結果をもとに、内窓が賃貸経営の空室対策として注目される理由、オーナーが設備投資を判断するときの注意点、東京都の支援制度を整理します。調査結果はオーナーの意識を示すものであり、内窓設置による入居率や賃料上昇を直接証明するものではありません。その点も踏まえて実務的に読み解きます。
賃貸オーナーの約9割が内窓による「選ばれやすさ」に期待
「遮熱性」や「防音性」を高める効果のある内窓を設置することで、入居者に選ばれやすくなると思うかという質問に対し、「とても選ばれやすくなる」が11.2%、「騒音など魅力の足りない物件に効果がある」が33.0%、「断熱性や結露など住宅環境改善が必要な物件に効果がある」が45.4%でした。これらを合計すると89.6%となり、多くのオーナーが物件の弱点を補う設備として内窓を評価しています。
特に重要なのは、単に「新しい設備だから人気が出る」という話ではなく、暑さ・寒さ、結露、外部騒音といった入居者が日常的に感じる不満の改善策として認識されている点です。賃貸物件での窓断熱については、賃貸住宅の窓断熱で入居者満足度を高める方法でも詳しく解説しています。
断熱性と騒音は「入居が決まりにくい」と感じる要因
断熱性の低い物件は45.3%が不利と回答
夏に暑く冬に寒いなど、断熱性の低い賃貸物件について、「とても決まりにくい」と「やや決まりにくい」を合わせた回答は45.3%でした。半数弱のオーナーが、室温環境の弱さを客付け上のマイナス要因として捉えています。
内窓は既存窓との間に空気層をつくり、室内側に熱を伝えにくい樹脂フレームを加えることで、外気の影響を受けにくくする仕組みです。製品やガラス仕様、既存窓の状態によって効果は異なりますが、冷暖房効率や結露軽減の改善策として検討できます。
騒音リスクのある物件は66%が不利と回答
線路沿いや幹線道路沿いなど、騒音リスクがある物件では、「とても決まりにくい」「やや決まりにくい」の合計が66.0%に達しました。立地そのものを変えることはできませんが、窓から入る音への対策は検討できます。
防音を目的とする場合は、内窓だけでなく換気口、壁、ドアなど音の侵入経路も確認する必要があります。窓対策の考え方は、内窓による防音効果と施工前の確認ポイントをご覧ください。
設備投資では「補助金」と「回収期間」が判断材料
既存賃貸住宅にも住宅性能を高める投資が必要だと感じたことがあるオーナーは24.5%でした。また、実際に設備投資を検討した理由では「補助金活用・税制優遇」が29.4%で最多でした。初期負担を抑えられる制度の有無が、改修判断を後押ししていることがうかがえます。
投資費用の回収期間については、「半年以内」10.7%、「半年~1年以内」26.0%、「1~3年」36.9%で、合計73.6%が3年以内を希望しました。一方で、内窓設置による効果を賃料だけで回収できるとは限りません。空室期間の短縮、退去抑制、冷暖房負担に対する入居者評価、補助金額などを物件ごとに整理することが必要です。
東京都では賃貸住宅向けの断熱改修支援を実施
東京都は令和8年度、賃貸住宅オーナーを対象に、省エネ性能診断や高断熱窓・ドア、断熱材の改修などを支援しています。公表資料では、高断熱窓について補助率3分の2、上限30万円/戸とされています。また、国の「先進的窓リノベ2026事業」と併用可能と案内されています。
ただし、対象製品、申請時期、契約・着工の順序、併用条件には要件があります。予算到達などで受付状況が変わる可能性もあるため、工事を決める前に公式情報を確認し、登録事業者へ相談してください。SYAAの対応内容は内窓リフォームの総合案内から確認できます。
賃貸物件で内窓を検討するときの確認項目
- 改善したい課題:暑さ・寒さ、結露、騒音のどれを優先するか
- 既存窓と取付スペース:窓額縁の奥行き、カーテンやハンドルとの干渉
- 建物のルール:区分マンションでは管理規約や管理組合への確認が必要か
- ガラスと性能:断熱、防音、日射対策など目的に合う仕様か
- 入居中の施工:日程調整、家具移動、工事案内をどう行うか
- 投資判断:補助金を含む実質負担と、空室・退去対策としての効果をどう評価するか
YKK APの「ウチリモ 内窓」は、既存窓の内側に設置する樹脂フレームの内窓で、薄型設計により従来は納まりが難しかった窓への対応範囲を広げた製品です。ただし、すべての窓へ設置できるわけではないため、現地調査で納まりと施工条件を確認する必要があります。
調査結果を賃貸経営へ生かすポイント
今回の調査から、賃貸オーナーが内窓を「断熱設備」だけでなく、騒音や結露など物件固有の弱点を補い、入居者に選ばれるための設備として見ていることが分かります。特に築年数が経過した物件、線路・幹線道路に近い物件、夏冬の室温について相談が多い物件では、現状把握から始める価値があります。
一方、効果や費用回収は建物条件によって異なります。入居率向上を断定せず、現地調査、補助制度、想定する入居者層、募集時の訴求方法まで含めて判断することが大切です。
出典・参考資料
- 株式会社日本財託「約9割の賃貸オーナー『内窓設置で入居者に選ばれやすくなる』、遮熱や防音性能を評価」(2026年8月26日)
- 東京都賃貸住宅断熱・再エネ×コンシェルジュ事業「賃貸住宅への支援策」
- クール・ネット東京「令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」
- YKK AP「ウチリモ 内窓」公式製品情報
調査概要:調査期間2026年7月10日~7月29日、回答者624名、調査対象は現在賃貸物件を所有し家賃収入がある人。調査結果はアンケート回答者の意識を示すもので、個別物件の入居率や賃料を保証するものではありません。